華夏の煌き
「いや、用というほどのことではないのだが、伯爵がジンリンに興味を持ったようなのでな」
「はあ」
ジャーマンは澄んだ水のようなアイスブルーの瞳を晶鈴に向ける。じっと目の奥を覗き、彼に悪意も下心もないと晶鈴は認める。
「ジェイコブ殿が、ここ数年で飛躍的に発展したので不思議に思いましてね。きっと何か、誰かが関与しているのだと。ただ単に金を儲けるだけならまだわかるのですが、商売敵を作るどころか、儲かるあなたを賛美する。危ない真似も、強欲なこともない。このような商人を初めてお目にかかる」
相当に褒められてジェイコブは気をよくする。
「まさしくわし一人では無理だったでしょうな。ジンリンのおかげで危険を回避し、金を稼ぎ、使うことで社会にも貢献出来ましたな」
ジェイコブは商人としては珍しく文化の保護や貢献にも努めている。
「私は面白い人に会うのが好きなのですよ。ジンリン、あなたのようなね」
「はあ」
「あなたのことを聞かせてもらえませんか?」
晶鈴は占いではなく、自身のことに関心を持つジャーマンを不思議に感じながら、華夏国でのことからここまでくる経緯を話し始める。話している間、晶鈴はサロンがとても静寂で時間が止まったように感じられていた。
108 解放
長く話したと思ったのに、わずかな時間しかたっていなかった。柄のついた湯飲みの中の、紅茶は温かい。
「ジンリン、よかったら私とこの国を廻ってみませんか? 自由の身なのですから」
「あの、わたしは華夏国へ戻る費用を貯めたいと思っているので」
「おやおや。そのような平凡なことを言ってはいけない。ここでじっとしているほうが華夏国へ戻る近道だと?」
「旅をするには相当の資金がひつようですから」
ジャーマンは少年のような瞳を見せてにっこり笑い、ジェイコブのほうに振り返る。
「彼女を連れて行ってもいいかな?」
「はあ……。いつまでも商売の手伝いというか、占ってもらっていたかったのだが」
「もう、必要ないのでは?」
「そういわれると確かにそうですがね」
「じゃあ、決まりだ」
「わしは良いですが、ジンリンの意志も尊重してやってくださいよ」
「ええ、もちろん。しかしあなたは良い商人だ。これからも国がどうなろうとも発展するでしょう」
「はははっ。これはどうも」
「はあ」
ジャーマンは澄んだ水のようなアイスブルーの瞳を晶鈴に向ける。じっと目の奥を覗き、彼に悪意も下心もないと晶鈴は認める。
「ジェイコブ殿が、ここ数年で飛躍的に発展したので不思議に思いましてね。きっと何か、誰かが関与しているのだと。ただ単に金を儲けるだけならまだわかるのですが、商売敵を作るどころか、儲かるあなたを賛美する。危ない真似も、強欲なこともない。このような商人を初めてお目にかかる」
相当に褒められてジェイコブは気をよくする。
「まさしくわし一人では無理だったでしょうな。ジンリンのおかげで危険を回避し、金を稼ぎ、使うことで社会にも貢献出来ましたな」
ジェイコブは商人としては珍しく文化の保護や貢献にも努めている。
「私は面白い人に会うのが好きなのですよ。ジンリン、あなたのようなね」
「はあ」
「あなたのことを聞かせてもらえませんか?」
晶鈴は占いではなく、自身のことに関心を持つジャーマンを不思議に感じながら、華夏国でのことからここまでくる経緯を話し始める。話している間、晶鈴はサロンがとても静寂で時間が止まったように感じられていた。
108 解放
長く話したと思ったのに、わずかな時間しかたっていなかった。柄のついた湯飲みの中の、紅茶は温かい。
「ジンリン、よかったら私とこの国を廻ってみませんか? 自由の身なのですから」
「あの、わたしは華夏国へ戻る費用を貯めたいと思っているので」
「おやおや。そのような平凡なことを言ってはいけない。ここでじっとしているほうが華夏国へ戻る近道だと?」
「旅をするには相当の資金がひつようですから」
ジャーマンは少年のような瞳を見せてにっこり笑い、ジェイコブのほうに振り返る。
「彼女を連れて行ってもいいかな?」
「はあ……。いつまでも商売の手伝いというか、占ってもらっていたかったのだが」
「もう、必要ないのでは?」
「そういわれると確かにそうですがね」
「じゃあ、決まりだ」
「わしは良いですが、ジンリンの意志も尊重してやってくださいよ」
「ええ、もちろん。しかしあなたは良い商人だ。これからも国がどうなろうとも発展するでしょう」
「はははっ。これはどうも」