華夏の煌き
国に変化があると聞いて星羅はもっと気になった。
「どんな変化ですか? 今でも飢饉で民は苦しんでいるのに……」
軍師として国を憂う星羅に晶鈴は優しく微笑みかけた。
「華夏国も浪漫国のように、天子という存在がいつか消えるでしょう」
「そんな……」
星羅にとって高祖が築いたこの王朝は、華夏国の歴史の中でも随一の王朝だと思っている。奴隷もおらず、宦官も無くなり、才によって自己実現が叶う理想的な国だ。華夏国の良さを熱心に話す星羅を晶鈴はじっと見つめる。
「とてもうまくいっていると思うわ。だけど変化がないとやはり滞ってしまうのよ」
「平和よりも変化がいいと思うのでしょうか」
「人は欲深いものね。目の前の平和に感謝ではなく、飽きを感じてしまうの」
「では、浪漫国のあとの分裂した国もまた更に変化が起こると?」
「そうよ。いつまで何のために変化させるのかわからないけれど」
「難しくて、わたしには、何が何だか……」
「ねえ。星羅。わたしたちと一緒に旅をしない? きっと国なんてものに縛られずに本当の自由でいられるわよ」
「自由……」
しばらく自由について星羅は思いを馳せたが、はっきりと答えを出せなかった。
「考えなくていいのよ。旅に出て、自分自身を感じるの。今の苦痛からも自由になるのよ」
星羅は、国のこと、軍師としての仕事、息子の徳樹や、父王の隆明を想い、そして亡き夫、明樹を想った。
「わたしは不自由なままでもいいです。ここでやることがあるから」
「そう……」
「母上はどうぞ、するべきことをなさってください」
晶鈴の眉が歪み、少しだけ寂しそうに見えた。
「あの、王には、父には会わなくて良いのですか?」
西国で朱京湖とは会ったようだが、華夏国ではなんとか星羅と会っただけだ。
「会わないわ。今の彼はもう後ろを振り向くことがないでしょう。会う必要がないの」
「そう、ですか」
「そうだ。会わねばならぬものがあったわ」
「誰です?」
「行きましょう。あなたがいないと会えないわ」
晶鈴は思い立ったように立ち上がり、星羅を外に連れ出す。馬の優々がつながれているところへ行き「さあこの子も一緒に」と優々の背を撫でた。
「一体どこへ?」
「あなたの屋敷を思ってちょうだい」
「ええ」
「どんな変化ですか? 今でも飢饉で民は苦しんでいるのに……」
軍師として国を憂う星羅に晶鈴は優しく微笑みかけた。
「華夏国も浪漫国のように、天子という存在がいつか消えるでしょう」
「そんな……」
星羅にとって高祖が築いたこの王朝は、華夏国の歴史の中でも随一の王朝だと思っている。奴隷もおらず、宦官も無くなり、才によって自己実現が叶う理想的な国だ。華夏国の良さを熱心に話す星羅を晶鈴はじっと見つめる。
「とてもうまくいっていると思うわ。だけど変化がないとやはり滞ってしまうのよ」
「平和よりも変化がいいと思うのでしょうか」
「人は欲深いものね。目の前の平和に感謝ではなく、飽きを感じてしまうの」
「では、浪漫国のあとの分裂した国もまた更に変化が起こると?」
「そうよ。いつまで何のために変化させるのかわからないけれど」
「難しくて、わたしには、何が何だか……」
「ねえ。星羅。わたしたちと一緒に旅をしない? きっと国なんてものに縛られずに本当の自由でいられるわよ」
「自由……」
しばらく自由について星羅は思いを馳せたが、はっきりと答えを出せなかった。
「考えなくていいのよ。旅に出て、自分自身を感じるの。今の苦痛からも自由になるのよ」
星羅は、国のこと、軍師としての仕事、息子の徳樹や、父王の隆明を想い、そして亡き夫、明樹を想った。
「わたしは不自由なままでもいいです。ここでやることがあるから」
「そう……」
「母上はどうぞ、するべきことをなさってください」
晶鈴の眉が歪み、少しだけ寂しそうに見えた。
「あの、王には、父には会わなくて良いのですか?」
西国で朱京湖とは会ったようだが、華夏国ではなんとか星羅と会っただけだ。
「会わないわ。今の彼はもう後ろを振り向くことがないでしょう。会う必要がないの」
「そう、ですか」
「そうだ。会わねばならぬものがあったわ」
「誰です?」
「行きましょう。あなたがいないと会えないわ」
晶鈴は思い立ったように立ち上がり、星羅を外に連れ出す。馬の優々がつながれているところへ行き「さあこの子も一緒に」と優々の背を撫でた。
「一体どこへ?」
「あなたの屋敷を思ってちょうだい」
「ええ」