華夏の煌き
隆明と桃華の仲睦まじい様子を見ると、確かに母、胡晶鈴が『会う必要がない』というのは当然かもしれない。みんな前を向いて生きているのだと改めて実感した。
徳樹の治世では大きな国難はなく十分に国力を蓄えることが出来た。近隣の諸国とも外交は穏やかで、交換留学生も盛んに行った結果、技術の向上が見られ、庶民の生活水準も上がる。地方の識字率もより高くなり、華夏国民はより自由に選択できるようになっていった。
郭蒼樹は軍師省きっての名教官となり軍師を幾人も育てた。星羅は蒼樹のおかげでいつでも大軍師の引退ができると笑った。
「次の大軍師はあなたの弟の郭文立が候補になるわね」
「まあ問題ないだろう」
「軍師はあなたのおかげで豊富だけど、教官になれそうなものはいるの?」
「しまった……」
「わたしが引退しても、あなたが引退できないのではね」
「軍師ばかり育てて、教官を育てることにうっかりしていたな。早速取り掛かるとしよう」
責任の強い蒼樹は自分の後進を育て上げてから引退する予定だ。二人は子を成さなかったが、軍師省の後進たちが2人の子供だった。
星羅は引退したら、蒼樹と二人で自由にいろいろなところへ旅をしたいと夢を見ている。
徳樹から数代後まで曹王朝は安定を誇ったが、やはり世界の時代の波にのまれていく。国の名も変わり、制度も変わり、王も消え、軍師も消えた。
曹王朝は華夏国屈指の安定した王朝と名高く、星羅は幻の女軍師として伝説の中に名を残した。
エピローグ 長い時を経て
小高い気持ちの良い風が吹く丘に、二人の老夫婦が上ってくる。二人は古い本を片手にあちこち見回していた。
「きっとこのあたりだと思うわ」
「ああ、そのようだ」
疲れた二人は柔らかい草の上に腰を下ろす。そんなに高い丘ではないのに遠くまで見通せる景観の良い場所だ。
「遠くまで見えるのね」
「あの辺りは昔の都があった場所だろう」
夫が指をさす場所は広々とした平原になっている。ふっと妻が横に目を向けると若い男女の二人組が見えた。
「あら、こんなところに先客がいたのね」
振り返った夫は男と目が合い頭を軽く下げる。座っている二人のところに、若い男女が近づいてきた。
「こんにちは」
徳樹の治世では大きな国難はなく十分に国力を蓄えることが出来た。近隣の諸国とも外交は穏やかで、交換留学生も盛んに行った結果、技術の向上が見られ、庶民の生活水準も上がる。地方の識字率もより高くなり、華夏国民はより自由に選択できるようになっていった。
郭蒼樹は軍師省きっての名教官となり軍師を幾人も育てた。星羅は蒼樹のおかげでいつでも大軍師の引退ができると笑った。
「次の大軍師はあなたの弟の郭文立が候補になるわね」
「まあ問題ないだろう」
「軍師はあなたのおかげで豊富だけど、教官になれそうなものはいるの?」
「しまった……」
「わたしが引退しても、あなたが引退できないのではね」
「軍師ばかり育てて、教官を育てることにうっかりしていたな。早速取り掛かるとしよう」
責任の強い蒼樹は自分の後進を育て上げてから引退する予定だ。二人は子を成さなかったが、軍師省の後進たちが2人の子供だった。
星羅は引退したら、蒼樹と二人で自由にいろいろなところへ旅をしたいと夢を見ている。
徳樹から数代後まで曹王朝は安定を誇ったが、やはり世界の時代の波にのまれていく。国の名も変わり、制度も変わり、王も消え、軍師も消えた。
曹王朝は華夏国屈指の安定した王朝と名高く、星羅は幻の女軍師として伝説の中に名を残した。
エピローグ 長い時を経て
小高い気持ちの良い風が吹く丘に、二人の老夫婦が上ってくる。二人は古い本を片手にあちこち見回していた。
「きっとこのあたりだと思うわ」
「ああ、そのようだ」
疲れた二人は柔らかい草の上に腰を下ろす。そんなに高い丘ではないのに遠くまで見通せる景観の良い場所だ。
「遠くまで見えるのね」
「あの辺りは昔の都があった場所だろう」
夫が指をさす場所は広々とした平原になっている。ふっと妻が横に目を向けると若い男女の二人組が見えた。
「あら、こんなところに先客がいたのね」
振り返った夫は男と目が合い頭を軽く下げる。座っている二人のところに、若い男女が近づいてきた。
「こんにちは」