カタストロフィ


ここまで来ておいて、振り切ることが出来なかった。
褥において役立つたくさんの知識と、わずかであるが得た実践経験をもって、ユーニスの身体から篭絡しようと思って夜這いを仕掛けたのに、結局この様である。

「何よ、今さら……」

散々喘がされて掠れてしまった小さな声が、鋭い矢となりダニエルの心を射抜く。
本当に今さらだ。
だが、どうしても彼女の真意が知りたかったのだ。
身体だけではなく、心も欲しい。
すべてが手に入らないのなら、今度こそ終わりにしたい。


「あなたっていつも勝手なのよ!いきなり人の心にズカズカ踏み込んできたと思ったら、変なところで遠慮して!最低よ、この外道!!」

「ごめん」

「なんでそこで謝るのよ!」


感情が昂り収まりがつかないのか、ユーニスの両目からボロボロと涙の粒が零れ落ちる。
もはや言っていることは支離滅裂だが、すべて自分が悪いと思っているダニエルは大人しく彼女の怒りを受け止めた。

「……本当に嫌だったら、あなたの男根を噛みちぎってでも抵抗したわ」

耳を澄ませなければ聞こえないくらいかすかなその呟きを、ダニエルは聞き逃さなかった。

「ユーニス、それは」

「私からはもうこれ以上何も言いたくないから、後はあなたが考えてちょうだい」

察しろという女性特有の態度について、面倒くさいと思うのがダニエルの本音である。
しかしこの厄介な性質も、愛する女性が抱えるものならば、途端にどうしようもなく魅惑的な部分となると初めて知った。

「夜着、脱がせてもいい?全身で君を感じたいんだ」

夜の営みの際も夜着を脱ぐことはないこの国でその要求は、とんでもなく卑猥なものである。
だがユーニスは抵抗するどころか、脱がせやすいように腰を浮かせた。

「嗚呼、すごく綺麗だ」

万感の想いを込めて全身にキスを落とす。
そして先ほどの妄想だけですでに先端が濡れそぼっている陽物を当てがい、少しずつ埋めていった。

「んうっ!」

息を止めて耐えるユーニスの頬を撫で、半分ほど入ったところで動きを止める。
頭がおかしくなりそうなほど気持ちいいが、辛うじて理性が消えずに済んでいるのは、お世辞にも気持ち良さそうとは言えないほどユーニスの表情が苦しげだからだ。

「続けても大丈夫?」

「だい、じょうぶ」

「嫌になったらすぐに止めるから、いつでも言って」

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