不遇な転生王女は難攻不落なカタブツ公爵様の花嫁になりました
部屋に入ったときも不思議だったが、ここはランドールという人の妻の部屋だろうか。

家具の形や色が女性が好みそうなもので統一されているし、ドレッサーまである。

他人の部屋を勝手に使ったような気になって、不安に思ったソフィアがメイドのひとりに訊ねると、彼女はくすくすと笑いながら教えてくれた。

「旦那様は独身ですよ」

「ええ。爵位を継いでから難しい顔をされることが多くなりましたので、実年齢より上に見られがちですけど、まだ二十一歳ですからね」

「そろそろそういったお話も出てくるかもしれませんが、お立場がお立場なのでお相手は慎重に選ばなければなりませんし」

「お立場?」

ヨハネスが確かヴォルティオ公爵家と言っていた。

ソフィアは爵位に詳しくはないが、公爵家がお貴族様だというのはわかる。

貴族は結婚相手を選ぶのも大変なのだろうかと首をひねっていると、メイドのひとりが教えてくれた。

「旦那様は国王陛下の甥御様でございますからね」

「下手な貴族令嬢はお相手に上りません」

「こくおうへいか……え、国王陛下!?」

ソフィアはぎょっと目を見開いた。

そういえばランドールが何度か陛下と言っていたが、あれは国王のことを指していたのだろうか。そうに違いない。

なぜなら陛下と呼ばれるのは国王その人しかいないのだから。どうして気がつかなかったのだろう。

「有力候補はキーラ王女でしょうか。ですが王女殿下はまだ十四歳ですからね、結婚のお話が出るのもあと一、二年は先でしょう」
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