不遇な転生王女は難攻不落なカタブツ公爵様の花嫁になりました
「支度は済んだか? 陛下が待ちきれないようだから早く城へ向かいたいんだが」

また、陛下。ソフィアは嫌な予感がしてきた。恐る恐る訊ねる。

「その……、わたしはどこへ連れていかれるんですか?」

すると、ランドールは驚いたように片眉を上げた。

「なにを言って……、ああ、そういえば、まだ教えていなかったか。さすがにあの場で口にすることはできなかったからな」

「はい?」

ソフィアが大きく首を傾げると、髪を結っていたメイドから「動かないでください」と注意が入る。

慌てて居住まいを正したソフィアはしかし、次の瞬間、あまりの驚愕(きょうがく)に勢いよく立ち上がった。

「城へ行く。お前の父親は、国王陛下だ」

「なんですってーーーーー!?」



* * *



「ふーん、ソフィア・グラストーナが市井の生まれだって言う"設定"は知っていたけど、迎えに来たのはあのランドールだったのねえ」

グラストーナ城のソフィアの部屋。

のんきに紅茶を飲みながら、のほほんとした口調で言うオリオンをソフィアはじろりと(にら)みつけた。

キーラの侍女のせいで頭を強打し、典医から絶対安静を言い渡されたソフィアの部屋には、オリオンとソフィアのふたりしかいない。

あのあと、ランドールに城に連れてこられたソフィアは、結局市井のフラットに帰ることは(かな)わなかった。

ソフィアの父親である国王陛下が、ソフィアを放したがらなかったせいだ。
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