不遇な転生王女は難攻不落なカタブツ公爵様の花嫁になりました
「由紀奈――紛らわしいからオリオンって呼ぶわ。オリオンが前世を思い出したのはいつ?」

「十歳かな。じい様と剣術の稽古をしているときに打ち所が悪くてねー。あんたと同じように気を失って、目が覚めたら思い出してたってわけ」

「十歳か……、くうっ、わたしも十歳のときに思い出してたら、なんとしてもこの国から逃亡したのに!」

そう――、ソフィアは転生者だった。

覚えているのは、中学一年生からの親友兼ゲーム友達である由紀奈と一緒に高校へ向かうときのことだ。

朝、のんびりとゲームの話をしながら歩いていたら、突然大きな地鳴りのような音とともに地面――綺麗に舗装されたアスファルトが消えた。

何事かと思ったときには数メートル下に落下して、そのまま意識が暗転――たぶん、そこで死んだのだろう。

(地面が陥没して死ぬとか……。行政! 道路の安全点検を(おこた)ってるんじゃないわよ!)

死ぬ直前の光景を思い出して怒りが沸々(ふつふつ)とこみ上げてくるが、問題は道路の陥没であの世行きになったことではなく、転生した先が"ここ"だったことだ。

(あーもう、信じられない! 転生先が死ぬ直前まではまってたゲームの中の世界とか、冗談きつすぎる!)

そう。ここはソフィアの前世、篠原花音がこよなく愛した乙女ゲーム『グラストーナの雪』の世界で間違いない。

なぜなら国名も一緒だし、登場人物も三人も合致している。

キーラ・グラストーナ。ソフィアの異母姉で『グラストーナの雪』のヒロイン。

ランドール・ヴォルティオ。ソフィアの従兄で、五人いる『グラストーナの雪』の攻略対象のひとり。

そして――
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