不遇な転生王女は難攻不落なカタブツ公爵様の花嫁になりました
「あ、うん、それは、えへへ……じゃなーい!」

ランドール・ヴォルティオ。『グラストーナの雪』の攻略対象五人のうちのひとりで、なにを隠そうソフィアの前世、篠原花音の最推しの人物だ。

オリオンの言う通り、ランドールを生で見られたのは(うれ)しかったが、今やランドールはソフィアのことを毛嫌いしていて、顔を合わせるたびに睨みつけてくるのだから喜べない。

国王の命令でソフィアを城へ連れてきたときは、ランドールは普通だった。特別いい感情は抱いていないようだったが、ソフィアのことを嫌っているわけでもなかったように思う。

それがこの三か月。……思い出しても忌々しい。

(キーラがあんなに性悪だったなんて、知っていたらゲームのバッドエンドばっかりやり込んだわよ!)

ソフィアの前では悪魔のようなキーラは、しかしランドールの前では天使だった。

ランドールも年の離れた従妹を実の妹のように可愛がっていて、基本的にランドールはキーラの言うことはなんでも信じる。

結果、キーラがなにを吹き込んだのか、ランドールは世紀の悪女を見るような目でソフィアを敵視するようになったのである。

「最推しから嫌われるとか、かわいそうにねえ」

「オーリーオーンー!」

ムカついたソフィアは、ソファから立ち上がってオリオンの襟元をぎゅうぎゅうと締め上げた。けれども鍛えられた護衛官であるオリオンへ平然とした顔で笑う。

「わかったわかった、まあ落ち着きなさいよ」

「これが落ち着いていられるか!」

「まあまあ、どうどう」

「わたしは暴れ馬か!」
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