アンドロイド・ニューワールドⅡ
「…もうかなり進みましたが、意外と姿を現してくれませんね」 

と、私は言いました。

しかし。

「はぁ…はぁ…しんどい…」

と、奏さんは肩で息をしていました。

「大丈夫ですか?どうかしました?」

「ど、どうかも何も…。俺は、結構限界だよ…」

と、奏さんは言いました。

何かあったのでしょうか。

今のところ、特に何もありません。

あのひらひらした触手の後、何処からかた放送が聞こえてきたり(「し、侵入…シャを、まっ…サツ、セヨ。ジーーーー」とか言っていました)。

何処からか、ドンドン殴る音や、この世のものとは思えないほど甲高い悲鳴が聞こえてきたり。

道中、歩いていたら、いきなり足首を何者かに掴まれたり。

頭上から、ポタポタと水滴が落ちてきたり。

はらわたをぶちまけた、人間の死体らしき人形が置いてあったりしましたが。

未だに、宇宙人の姿は見えていません。

一度壁に、恐らくプロジェクターで映した宇宙人の姿が見えましたが。

あれは実体ではありません。

本物の宇宙人とは、なかなか出会えないものです。

「友好関係を築きたいと思っているのですが、なかなか出会えませんね」

「出会わなくて良いよ…。うぅ…辛い…何が一番辛いって、女の子の方は全然怖がってないのに、男の俺がびびりまくっているっていう、その情けない状況が辛い…」

と、奏さんは顔を押さえて、ぶつぶつ呟いていました。

大丈夫でしょうか。何だか奏さん、先程から顔色が悪いですが。

おまけに、先程から度々、「ひっ!」とか「うわっ!」とか、短い悲鳴をあげています。

何か不思議なものでも見えたのでしょうか。

私には見えません。

人間にしか見えない何かが、あるのかもしれませんね。

「そろそろ終わるかな…終わってくれ頼むから…。このまま何事もなく終わってくれ…」

と、奏さんは祈るように言いました。

このまま何事もなく終わったら、拍子抜けですね。

私としては、宇宙人お化けが、群れを成して攻めてくるくらいの出来事が起きて欲しいのですが…。

すると。

「ウォォ…ォォォ…ォ…」

と、何者かの呻き声が聞こえてきました。

「ひぇっ」

と、奏さんは短く悲鳴をあげながら、びくっ、としていました。

大丈夫でしょうか。

「何か見えましたか?」

「いや、見えてはないけど…。聞こえたでしょ?今の…」
 
「今の?」

「今の…呻き声みたいなの…」

と、奏さんは青い顔で言いました。

呻き声ですか?

「聞こえましたよ」

「やっぱり、何かいるんじゃない?この先…」

「ほう。ようやく宇宙人のお化けと対面ですか。私に心はありませんが、心があったら踊っているところです」

「俺には心があるけど、全然踊り出しそうな気はしないよ」

「そうですか。しかし会ってみなければ分かりません。意外と、友好的な宇宙人である可能性もあります」

と、私は言いました。

「では会いに行きましょう」

「いや、ちょ、待って瑠璃華さん。先に進まなきゃいけないのは分かるけど、でも心の準備ってものがまだ、」

と、奏さんは言いましたが。

宇宙人に会えるかもしれないということで、無意識に気持ちの逸っていた私は。

どんどん奏さんの車椅子を押して、声のした方に向かいました。

「こんにちは、宇宙人さん。宜しければ私と、」

「ギ…グォォ…ギガァァァァ!」

「ぎゃ[〉∇≧〈﹀◀∝◀≯∏」

と、私、宇宙人、奏さんの順番で声をあげ。

この場が、しばし混沌と化しました。
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