アンドロイド・ニューワールドⅡ
「そう断言出来るデータでも、見つけたのですか?第1局では」

「いいえ。私が1110番の普段の言動や、これまでの『人間交流プログラム』の成果報告を聞いて、自分でそう判断しただけです」

と、2017番は言いました。

つまり、その判断は、あくまで2017番の主観に基づいたものなのですね。

「2017番の性能は碧衣さんを上回っている」と、『Neo Sanctus Floralia』がデータによる根拠を持って、実証した訳ではないということです。

であれば。

「あなたが勝手にそう思っているだけで、本当はあなたと碧衣さんの間に、優劣などないのでは?」

と、私は聞きました。

だって、根拠は自分の自信だけなのでしょう?

実に心許ない判断基準です。

「いいえ。それでも、1110番より私の方が優秀です」

と、2017番は涼しい顔をして言いました。

余程、自分の性能に自信があるようです。

「根拠をお聞かせください」

「はい。何故なら1110番は、最も長く『人間交流プログラム』に参加していながら、ほぼ全くと言って良いほど、成果をあげていないからです」

と、2017番は答えました。

…。

…どういうことですか?

「彼は、『人間交流プログラム』を考案した紺奈局長が所属する第2局の『新世界アンドロイド』です。そして、一番最初に『人間交流プログラム』に参加しました」

「そうですね」

「にも関わらず、彼は相変わらず、紺奈局長に偏った、歪んだ性癖を持っています。橙乃局長が仰っていました」

「何と仰っていたのですか?」

「『1110番は、人間の振りをするのは上手いが、根底にある部分は、『Neo Sanctus Floralia』にいた頃と何も変わっていない』と」

と、2017番は言いました。

成程。

つまり、碧衣さんの、異常なまでの紺奈局長好きは、第2局にいた頃から何も変わっていないのだから。

従って、『人間交流プログラム』の成果も、全くないに等しいと。

2017番は、そう判断したのですね。

「半年以上プログラムに参加していながら、何の進歩もない1110番は、私にとって目標にはなり得ません」

「…」

「そこで、目標になるのはあなたです。1027番」

と、2017番は私を指差して言いました。

「あなたは、半年に及ぶ『人間交流プログラム』の成果をあげ、見事に人間の感情を学習していると聞きました。つまり、私が越えるべきなのはあなたです」

「成程、そういうことでしたか」

と、私は言いました。

彼女の理論…と言いますか、理屈は理解しました。

しかし、理解出来ないこともあります。

「何故、越える必要があるのですか?」

と、私は尋ねました。

一番聞きたいのは、その点です。
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