アンドロイド・ニューワールドⅡ
「喧嘩?これは喧嘩ではありません。私の目標を宣言しているだけです」

と、2017番は臆することなく言いました。

碧衣さんのヤンデレアンドロイドモードを恐れていないのか、と思いましたが。

そういえば、2017番は、型式番号からして、比較的最近造られたばかりの『新世界アンドロイド』ですので。

まだ、ヤンデレアンドロイドモードと化した碧衣さんが、さながら鬼神のように変化することを知らない可能性があります。

私は知っています。

紺奈局長の陰口を叩いたアンドロイドが、彼によって半壊させられたことを。

そして2017番も、見ての通り。

橙乃局長譲りの、負けず嫌いな性格です。

自ら引くタイプではありません。

最悪、この場でアンドロイド同士の決闘が始まりかねません。

世紀末です。

「良いですよ。僕のことなら何と貶してくれても結構です」

と、碧衣さんは笑顔で言いました。

非常に真っ黒な、歪んだ笑顔です。

「しかし、僕を貶すことで、僕を製造した紺奈局長までもを侮辱しているのだとしたら…」

「…したら?」

「…本当に僕が、あなたより劣ったアンドロイドなのか…試してみましょうか?」

と、碧衣さんは聞きました。

笑顔です。

炭を塗り潰したような笑顔です。

「分かりました。受けて立ちます」

と、2017番は言いました。

この両者の間で、見えない火花が散っています。

相手が人間であれば、魔法のひと言、「どうどう」を使って落ち着かせるのですが。

残念ながら、相手はお二人共『新世界アンドロイド』です。

「どうどう」が通じる相手ではありません。

…そこで。

「…警告します。1110番、並びに2017番は、ただちに戦闘行為をやめてください」

と、私は冷静に言いました。

私達『新世界アンドロイド』には、お互いが争うことがないよう、条件付けが施されています。

この「警告」が、条件付けを発動させるトリガーとなります。

つまりこの「警告」をすれば、お二人共自動的に、矛先を収めるということです。

ただし、ヤンデレアンドロイドモードに移行した碧衣さんに、この条件付けが効くかどうかは不明です。

しかし、少なくとも2017番の方は、これで落ち着くはずです。

その証拠に。

「…そうですね。確かに、少し言い過ぎました」

と、あれほど負けず嫌いで頑固だった2017番は、たちまちにして大人しくなりました。
< 268 / 467 >

この作品をシェア

pagetop