アンドロイド・ニューワールドⅡ
…それはともかく。

「アパートの屋上なんて、そんなに高くないと思ってたけど…。こうしていざ上ってみると、意外と高いね」

と、奏さんは言いました。

「そうですか?」

「うん。フェンスがないから余計…スリルもあるし。落っこちないように気をつけてね」

「勿論です」

と、私は言いました。

大丈夫です。もし何かあって、落っこちることがあったら。

地面に叩きつけられる前に、私が助けに入ります。

ご心配なく。

「割と良い眺めだね」

「そうですか?」

「うん。良かったら今度、県内にある夜景スポットに、」

「では行きましょうか、奏さん」

と、私は言いました。

「…え?行くって何処に?」

「?だって、ここからが本番でしょう?」

と、私は聞き返しました。

奏さんも、そのつもりでここまでついてきたのでは?

「本番って…?だって、高いところから景色を見に来たんでしょ?」

「はい」

「見たじゃん」

と、奏さんは言いました。

…はい?

「何か見えましたか?」

「え?だってここから見る景色を…え?他に何処に行くの?」

と、奏さんは聞きました。

どうやら奏さんは、何やら誤解をしていらっしゃるようですね。

私は確かに、奏さんに広い世界をお見せすると言いました。

しかしそれは、このようにちっぽけなアパートの屋上から見る景色のことではありません。

世界は、もっともっと広いですから。

その広い世界を、奏さんにお見せします。

「…戦闘モードに移行。バーチャルウイング展開します」

と、私は呟きました。

途端。

私の背中に、薄紫色をした、電子の羽根が広がりました。

そのときの、奏さんのポカンとした顔と言ったら。

まるで、新種の生き物でも見えたかのようです。
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