アンドロイド・ニューワールドⅡ
「では、早速」

と、私は言いながら。

ひょいっと、奏さんを抱き上げました。

「ちょ、な、何してるの!?」

「だって、抱えないと飛べませんから」

「飛ぶ!?」

と、奏さんは驚愕の表情でこちらを見ました。

「はい。高いところから景色を見る、と言ったでしょう?」

「あ…!あれってそ、そういう意味だったの…!?」

「?はい」

と、私は答えました。

他にどういう意味だと思っていたのでしょう。

「る…瑠璃華さんって、と、飛べるの…?」

と、奏さんは不安そうな顔で聞きました。

「勿論です。この羽根で、何処までも飛ぶことが出来ます。私と共に、快適な空の旅をお楽しみください」

「そ、そんな飛行機のアナウンスみたいに…」

「何なら、単体で大気圏突破も可能ですよ」

と、私は言いました。

バーチャルウイング展開中ですから。大気圏突入も、何なら宇宙空間での航行も可能です。

とはいえ、今回は私一人ではなく、奏さんを連れているので。

私には耐えられても、生身の人間である奏さんには耐えられないので、残念ながら、今回はやめておきましょう。

「では、飛びましょうか」

と、私は言いました。

そして、奏さんを抱えたまま、柵のないアパートの屋上の、端っこまで歩きました。

あと一歩踏み出せば、そこは空中です。

それを見て、奏さんは生唾を呑み込みました。

「ちょ、る、瑠璃華さん。その、ちょっと俺、心の準備が、」

「では飛びましょう。えい」

「ふわぁぁぁぁぁぁ!?」

と、奏さんは非常に素っ頓狂な悲鳴をあげました。

そのとき、私と奏さんは、既に。

ふわりと空中に飛び、足元には、既に足場はなくなっていました。

いざ、空中散歩の始まりです。
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