アンドロイド・ニューワールドⅡ
本来なら、私はこの状態で、音速の速さで飛べるのですが。

そのような速さで飛んでしまうと、生身の奏さんにダメージが及ぶので。

今回は、非常に控えめな速度で飛んでいます。

しかし、それでも奏さんにとっては、かなりの衝撃的体験だったようで。

きゃーきゃーぴーぴーと悲鳴をあげ、青ざめた顔で私にしがみついていました。

大丈夫でしょうか。

「お、おおお落とさないで、落とさないでね!絶対、ちゃんと掴んでてね!」

と、奏さんは真っ青な顔で叫びました。

「勿論です。万が一手を滑らせたとしても、地面に衝突する前に拾いますから、ご安心ください」

「肝が冷えるから、そもそも落とさないで!」

と、奏さんは叫びました。

分かりました。落とさないよう努力します。

「う、うぅぅぅ」

「大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫。大丈夫…怖くない怖くない…」

と、奏さんは、自分に言い聞かせるように呟きました。

怖くありませんか。それなら良かったです。

では。

「もう少し、高度を上げてみましょうか」

「え?」

と、奏さんは真っ青な顔で聞き返しました。

大丈夫です。人間が生存可能な高度までしか跳びません。

そのまま、私は奏さんを抱えて、急上昇しました。

奏さんは、頭のネジが外れたみたいな叫び声をあげていました。

何か不思議なものでも見えたのでしょうか。

「大丈夫ですか、奏さん」

「し…死ぬ…。死ぬ…死にそう…」

と、奏さんは半ば失神しかけながら呟きました。

奏さんに死なれては困りますね。

そうだ。美しい景色を見せると約束しましたよね。

では。

「海に行きましょうか、奏さん」

と、私は提案しました。

「う、海…?」

「はい。折角ですから、海の上を飛ぶカモメの気分になりましょう」

と、私は言いました。

それに、ここから海までの距離と、現在の時刻を計算したら。

丁度、良い時刻に海に辿り着くことが出来るでしょう。

では、海に向けて出発です。
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