アンドロイド・ニューワールドⅡ
漆黒の、暗い夜の街が。

カラフルなライトに彩られ、さながらクリスマスツリーのごとく、きらきらと光っています。

先程見た、自然の作り出した海に沈む太陽も美しいですが。

こうして、人間の手で作り出した景色もまた、美しいものです。

素晴らしい眺めですね。

「こんな景色…見たことがないよ」

と、奏さんは言いました。

そうでしょうね。

まず、アンドロイドと一緒に空を飛ぶ、という体験が出来る機会など、ほとんど全ての人間にとっては皆無でしょう。

奏さんは特別です。

何せ、私の親友ですから。

「夢みたいだな…。まさか、瑠璃華さんと…こんな景色が見られるなんて」

「そうですか。しかし、これは夢ではありません。現実ですよ」

と、私は言いました。

このような素晴らしい光景を、夢にしてしまうのは勿体ないでしょう。

ちゃんと、現実に起きたこととして、記憶してもらいたいものです。

「そっか、現実…現実なんだよね、これって…全部」

と、奏さんは言いました。

「瑠璃華さんが本当にアンドロイドだったのも、そんな瑠璃華さんと友達になったのも…。俺がこんな特等席で、こんな綺麗な景色を見てるのも、全部…夢じゃない。本当のことなんだ」

「えぇ、そうです」

と、私は言いました。

その通りです、奏さん。

しっかりと、目に焼き付けてください。脳裡に焼き付けてください。

あなたの目の前にあるのは、全て本物の景色なのです。

「…神様なんていないと思ってた。あの日…事故に遭って、足をなくして、両親を亡くしたとき」

と、奏さんはポツリと呟きました。

はい?

「でも、そんなことはなかった。神様はいたんだ。ちゃんと…美人な女の子の姿をした、人工の、新世界から来た、俺だけの神様」

「奏さん…?」

「生きてて良かった。瑠璃華さんに出会えて、友達になれて、本当に良かった…。俺は今日のことを、死ぬまで永遠に…ずっと忘れないよ」

と、奏さんは微笑んで言いました。

…そうですか。

分かりました。

あなたが、そう仰るなら。

「はい、私も忘れません。人間の世界で、一番の親友と見た、この…広く美しい世界のことを」





永遠に、私の心の中に刻んでおきましょう。

ずっとずっと、忘れることがないように。




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