アンドロイド・ニューワールドⅡ
桃という果物は、いくら収穫しても、全く逆襲を受ける心配はないことが発覚しました。

衝撃の新事実です。

そうと分かれば、遠慮なく。

チョキン。

…ぽてん。

チョキン。

…ぽてん。

チョキン。

…ぽてん。

チョキン。

「ちょ、ちょっと瑠璃華さん」

「はい、何ですか?」

と、私は聞きました。

ぽてん。

「乱獲過ぎない?桃って結構、一個でもボリュームあるよ。いくら食べ放題って言っても…そんなに食べ切れる?」

と、奏さんは心配そうに聞きました。

確かに、乱獲は良くありませんね。

食品ロスのもとになります。

しかし、『新世界アンドロイド』である私に、胃袋の限界はありません。

「問題ありません。余程不味い桃でない限り、食べ切れますから。もぐ」

「って、ちょっと。せめて一回洗おうよ。そのまま齧るの?」

と、奏さんは聞きました。

奏さんって、結構几帳面なのですね。

「農薬とかついてたらどうするの。あと皮、皮も剥いてないのに」

「もぐもぐ。国内で使用を許可されている農薬の中に、アンドロイドに影響を及ぼすほど薬効の強い種類はありません。もぐもぐ」

と、私は答えました。

「それに、皮付きでも充分食べられます。もぐもぐ。…奏さんもどうぞ」

「いや、俺は…洗って皮を剥いてから食べるよ」

「もぐもぐ。奏さんって、案外几帳面なのですね」

「…瑠璃華さんがワイルド過ぎるんだと思うけどな…」

と、奏さんはポツリと言いました。

私がワイルド?何処がですか?

「いくら食べても、何も出てきませんね」

「種しか出てこないと思うよ」

「おかしいですね。殺人鬼ならぬ、殺鬼鬼が出てくると思っていたのですが…」

「…桃太郎への風評被害…」

と、奏さんは呟いていました。

何への風評被害ですって?

何も出てきませんので、安心して食べられますね。

それに。

「結構美味しいですよ、これ」

と、私は言いました。

重要なことですよね、味は。
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