望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
 だが、わかっていてもどうしようもないこともある。
 この感覚はあのときの感覚に近い。あの戦争の中で傷ついたとき、意識が失われていく中で初めて彼女に出会った衝撃。

 間違いない。彼女は自分にとっての運命の番。
 だが――。

「もしかして、義姉さんが兄さんの運命の番、とか?」

「だったら、なぜ出会ったときに気付かない。なぜ今更?」

「義姉さんが寝ているから? それで兄さんが欲情したとか」

「いや、違う」
 レイモンドにはアドニスの冗談に付き合う余裕も無いらしい。

 カレンを抱きかかえたまま、レイモンドは考える。先ほど、彼女が意識を失う前に何と言っていたか。思い出せ。
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