望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
 そして黒豹は人間の姿へと戻る。レイモンドはアドニスからカレンを受け取り、抱き上げる。不本意ながら、ベッドまで運んでやろうという気持ちだった。
 だが、彼女を抱き上げた時に、むせかえるような匂いがした。

「なんだ、この匂いは」

「匂い? 何も感じませんが?」
 アドニスが近づいてきて、鼻をくんくんとさせる。そして「あ」と声をあげる。

「兄さん、半獣化してます」
 アドニスが言う通り、せっかく人型に戻ったレイモンドであるが、豹の耳と尻尾が見えていた。

「ああ。わかっている。だが抑えがきかない」

 わかっている。わかっているのだ。自分の意思に反して半獣化してしまったということは。自分の力の制御ができていない、ということも。
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