望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
 結婚式には、レイモンドの部下と思われる者たちも何人か出席していた。その彼らの視線は上官に対する同情の視線。ダレンバーナの花嫁を娶ってしまった上官に対しての哀れみだ。
 だから、誰も「おめでとう」とは言わない。むしろかける言葉があるのなら「ご愁傷様」なのだろう。

 誰も祝ってくれない結婚式など挙げる意味があったのだろうか、とカレンは思う。いや、儀式だからこそ必要な結婚式なのだ。

 食事の席も、カレンは無言で手と口だけを動かす。それはレイモンドも同様。いや、レイモンドだけでなく、この食事会に出席した誰もがそうだった。
 ふと視線を感じてそちらのほうに顔を向けると、アドニスがこちらを見ていた。幼いアドニスだが、今のカレンにとっては心に安らぎを与えてくれる唯一の人物でもあった。目が合うと、彼はニッコリと微笑んでくれた。だから、カレンも笑い返す。
 式も食事も、静かに進んで静かに終わった。義務は果たした。

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