望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
「もう、終わりですか?」

「これだけあれば充分だろう。早く止血しろ」
 止血しろ、というその言葉の意味を考える。つまり、自分でなんとかしろということだ。

 カレンは深く息を吐いた。本当にこの男は自分と関わるつもりは無いらしい。
「旦那様が心配なさる必要はございません。私はダレンバーナの女ですから」
 言うと、切り付けた腕のその箇所を、反対の手でそっと覆った。すると、切り付けたはずのところは、何もなかったかのように元通りになった。止血どころではない。その傷をすっかりと治してしまったのだ。本当にそこに傷があったのかと思ってしまえるくらいに。

「お前は、魔導師なのか」

「正確に言えば、魔導師の娘です。私自身は魔導師として認められておりません。ですから、ダレンバーナとしては私の能力を把握していないはずです。このことを知っているのは死んだ母と、そして今、これを見た旦那様だけです」
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