望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
「お腹、空いていたのね」
 カレンはまたパンをちぎって、手の平の上にのせる。それを黒豹がペロリと食べる。という繰り返し。すぐにパンは無くなってしまった。
「あと、ミルクはこっそりともらってきたから」
 カレンは深い皿にミルクをいれて、豹の前に差し出した。

「ちょっと怪我を見せてね」
 ミルクを飲もうとしていた豹ではあるが、カレンがそう言ったためにお預けをくらってしまった。
 昨夜、止血した場所を確認するために縛ったものをカレンがゆるめると、それは顔を少し歪める。

「この怪我。見た目は肩の怪我よりは酷くないんだけど、魔力が残っているみたいね」

 となると、先に魔力を取り除く除力(じょりょく)を行ってからの治療となる。魔力が残っている怪我は魔力に侵され、治らないからだ。治りにくいのではなく、治らない。

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