望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
「あなた。ダレンバーナから来たの?」

 魔力を使われて怪我を負ったとなると、そう考えるのが妥当だった。
 それの頭を撫でると、もう一度怪我の部分を縛り直した。

 カレンは魔力の取り除き方ってどうやるんだっけかな、と呟いていた。その口調がいつもの彼女と違うことに、豹は気付いているが、カレン自身は無意識だ。

 カレンは何か荷物をごそごそ漁り始めた。ここに来る時にも鞄一つで来たような娘だ。荷物なんて大して持ってきていないだろう。
 それでも鏡台の引き出しの一番奥から、古くて分厚い一冊の本を取り出した。表紙は少し日焼けしている。
 そのまま鏡台の前に座って、分厚い本をゆっくりとめくっているようだった。背筋が伸びて、長い銀色の髪は背中を覆い、真剣に取り組むその姿は美しい。
 黒豹は思わず顔を上げ、その後ろ姿をじっと見つめてしまった。

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