望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
「なんか、思い出してきたような気がする」
 すると椅子から立ち上がると、右手の人差し指でくるくると宙に何かを描く。

「やっぱり、除力には魔法陣が必要なのか。苦手なのよね」

 苦手。もしかして、期待できないのだろうか。と、またそれは顔を埋めた。
 しばらくするとカレンは誰かに呼ばれ、部屋を出ていく。そしてしばらくすると戻ってくる。部屋に戻るとまた宙にくるくると何かを描いている。苦手と言っていたから、きっと魔法陣の練習なのだろうと勝手に解釈する。
 ただ、彼女の集中力には目を見張るものがあった。部屋にいる間は魔導書を読み込み、魔法陣を描く。ひたすらそれを繰り返している。

「よし。今度こそ大丈夫よ」
 カレンがそう言ったのは、彼女が湯浴みをした後だった。頬は少し火照っている。
 彼女が部屋で湯浴みをしている間、その黒豹はバルコニーに追い出されていた。侍女のメアリーに見つからないようにするため、らしい。
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