舞台の上で輝いて
どうして良いか分からないし、息苦しさも半端なくなってきた、どうしよう…
今どう行動するのが正解なの?
頭の中が真っ白、もう駄目だ、そう思った時に、とても穏やかで耳に心地よい声で
「頑張って良い作品にしようね。これからよろしくね」
結城さんだ。
これまでバレエ団に入団して3年、朝と帰りの挨拶しか交わした事がない相手。
雲の上の存在。
「……」
返事も出来ない。
身体も動かない。
人間、驚いたり緊張すると全く何も出来ないという事を初めて知った…。
声が出ないので、うつむきながら、僅かばかり頭を動かしてうなずいた。
これは現実なのかどうかさえもう分からない。
俯いていたから、全く周りを見ていなかったから気がつかなかった。
温かい、慈しむ様な愛しい者を見る様な眼差しを向けている結城さんの事も。
笑顔ではあるけれども、目は全く笑ってなく、冷たく鋭い視線を向けている麗奈さんの事も。