結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
「あぁ、思っていたより簡単だったな」

 ふたりはこの旅行の帰りに役所に寄って婚姻届を出す準備をしていた。だから、これが恋人として行く最初で最後の旅行になるのだ。

(一度だけでも、恋人らしいことができてうれしいな)

 凛音の頬は緩みっぱなしだ。

 会話が尽きることはなく、楽しい時間がいつまでも続いた。

「そうだ。ここのお風呂ってすごく素敵でしたよね!」

 以前に訪れたときの記憶がどんどん蘇ってくる。

 この別荘のバスルームは二階にある。ルーフバルコニーに張り出すような造りになっていて、ガラスの天井から星空を眺めることができるのだ。

「そんなことまで、よく覚えてたな」

 凛音は恥ずかしそうに笑む。

「オシャレだなって、ワクワクしたのを思い出して」

 龍一はふっと目を細めると、席を立って凛音の後ろまで歩いてきた。軽く腰を折って、座っている凛音の耳元に唇を寄せる。

「今夜は……一緒に入ろうか」
「えぇ?」

 勢いよく振り返った凛音の唇を彼がそっと奪う。

 焦らすような速度で、彼の舌がぺろりと凛音の上唇をなぞる。

「ふっ」
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