結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
「いや、お前がすすめられた酒を断れないことくらい少し考えればわかるのに……俺のせいだ」

 龍一はベッドサイドの椅子に腰をおろしながら、優しい声で言う。

「眠っていいぞ。寝つくまでそばにいるから」

 本当の兄のような台詞に、凛音は思わず涙ぐみそうになる。

「あの……」
「なんだ?」

 彼の声がいつもより柔らかいから、凛音は素直な疑問を口にすることができた。

「今日はどうして私を同伴したんですか?」

 公の場に彼の妹として出ることなど初めてだった。

 もっとも、人のうわさはすぐに広まるもの。財界にも凛音の存在を知る者は多いのだろうが。

 龍一はためらい気味に言葉を紡ぐ。

「ちょっとな、考えていることがあって」

 多くを語る気はなさそうだ。凛音もどうしても詮索したいわけではない。

 ふふっと口元をほころばせて凛音は言った。

「うれしかったです。妹として一緒に参加できて」

 ほんの一瞬、彼の表情から色が消えた。が、龍一はすぐに我に返って穏やかな微笑を取り戻す。

「もういいから、ゆっくり休め」
「はい」
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