天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!2
「ほら、酒だ──飲もう。そなたが、用意してくれたものだがな」

 独身の頃、幾たびかこの領地を訪れた国王は、慣れた様子でみずからグラスに酒を注ぐ。片方をジェラルドの前に滑らせると、ソファの背もたれに背中を預けた。

(……この方は、変わらない)

 国王と行き来があったのは、アウレリアが生きていた頃だけ。

 彼女が亡くなってからは、彼からの手紙も、必要な用件──つまりは仕事──以外は返さないままだった。

 彼がこうして酒を勧めるのは、なにか面倒なことを頼む時と相場が決まっている。昔は、難しい魔道具の開発を次から次へと押しつけられたものだった。

「私を、ここに呼んだのは──なにかお話があるからでしょう?」

 受け取らねば面倒なことになるとわかっているから、王の滑らせてきたグラスを手に取る。カラン、とグラスに当たった氷が小さな音を立てた。

「ミリエラのことだ」

 娘の名を口にされ、瞬時にジェラルドの顔が凍り付く。次に口から出る言葉が予想できてしまう──予想できてしまうからこそ、ジェラルドは先に口にした。

「お断りいたします」
「話が早すぎるだろう──最後まで聞け」
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