カモフラ婚~CEOは溺愛したくてたまらない~
翌朝。

私は酷い寝苦しさで目覚ましよりも早くに目が覚めた。

寝苦しさの原因は、間違いなく私の隣で私を抱きかかえるようにして眠っている蒼空のせいだ。

蒼空とこんなことになってしまうまでは、ずいぶんと長いこと一人でのんびりゆっくり心地よく眠っていたのだから、こんなに密着されてしまっていては正直いって邪魔である。

私は眉を顰めて身を捩り蒼空に視線を向けたのだが、その寝顔を目の前にすると顰めた繭も垂れ下がってしまう。

こうやって改めて見るとなんて綺麗な顔をしているのだろうか。

小さいころの面影はあるものの、あんなに可愛らしかった蒼空はどこにもいなくて。

ただただ綺麗で男らしくて、イケメンなんて言葉では片付けられないほどの顔をしている。

これが自分の旦那様になってしまったと思うと、この一年が末恐ろしい。

この目が開いた瞬間に、間違いなくコロッといっちゃいそうで。

「これはヤバいな……」

私はそう呟くと蒼空の包囲網から逃げ出し、朝の準備を始めることにした。

お家で迎える旦那様との初めての朝だし、私も一応女なのだから、朝ごはんだってメイクだって、できる限りのことはしておきたい。

準備万端で蒼空を優しく起こしてあげるのだ。

妻になって初めてのお仕事にむず痒さを感じながらも。私は全てを整えて、蒼空を起こすべく再び寝室へと向かった。

目を覚ました蒼空から、ギリギリまで離してもらえないことも知らずに。
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