カモフラ婚~CEOは溺愛したくてたまらない~
プランナーとしてあってはならない行動をしたことは、自分が一番よくわかっていた。

だからこそ、富田部長からなんと叱責されても仕方のないことだと覚悟を決めてここにやってきたというのに、まさか『おめでとう』なんて言葉を聞くとは思わなかった。

私はいろんな意味で驚きを隠せなかった。

「坂木さんから、事の成りは報告を受けているよ。月城様も大変だったようだね」

「はい……。まさか新婦様があんなことをなさるなんて」

「菱崎さんの判断が正しかったかどうかはわからない。けれど月城様からも朝一でお電話いただいていてね。彼の気持ちを聞いて、納得することにしたよ」

上司として複雑な心境であることに間違いはないのだろうが、部長は私を責める言葉は一切言わず、これからもプランナーとして頑張ってくれとだけ伝えてくれた。

きっと蒼空は私の立場を考えて、上司に直接話をつけていてくれたのだろう。

それに一番状況を理解してくれていた杏も、私のことを思って説明してくれたに違いない。

二人のおかげで私はお咎めなしということになり、無事に通常業務に取り掛かることができた。

就業後、何とか杏を捕まえることができた私は、杏に深々と頭を下げた。

「やめてよ、そんなことするの。別に謝られるようなことしてないでしょ?」

「十分してるよ。こんなこと、本当だったら認められるはずないんだから」

いくら蒼空からの頼み事だったからといって、自分が新婦になるなんて、通常ならば絶対にありえないことだし、まずやってはならない。

プランナーが自分の立場も忘れて、新婦から逃げられた新郎と結婚しちゃうなんて。

そんなプランナー、世界中探しても見つからないだろう。
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