孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
私は思わず手でひさしを作り、「う」と声を漏らした。
霧生君は私の反応に構わず、ポカンと口を開けたままの操を気にする。


「……もしかして、先約あった?」


ちょっと気まずそうに首を傾ける彼に、操が「いえいえ!」と力一杯首を横に振った。


「私もオンコール明けで疲れてるので。どうぞどうぞ、お構いなく!」


まるで献上するみたいに、私の肩をトンと押す。


「え、操っ!?」


私は霧生君の前につんのめり、慌てて彼女を振り返った。


「今、初詣一緒に行こうって……!」

「なに言ってんの。新しい彼氏でしょ?」


操は私の肩に腕を回し、霧生君にくるっと背を向けながらコソッと耳打ちしてくる。


「!?」

「今日のところは、空気読んで遠慮させてもらうわよ。その代わり、仕事始まったらじっくり説明してもらうからね」


ポンポンと肩を叩かれ、私は口をパクパクさせた。
操は絶句する私から腕を放し、霧生君に向かって嫌に愛想よく微笑む。


「じゃ、私はこれで」


ペコリと頭を下げ、いそいそと立ち去っていった。
霧生君は狐に抓まれたような顔で、その背を見送り……。


「今の、鹿野さんでよかったよね。あんな感じの人だったっけ?」


顎を摩って首を捻る彼に、私は溜め息を返した。
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