孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
「霧生君だって、わかってないんだよ」

「え?」

「……勘違いして、気を利かしてるつもり」

「ふーん?」


霧生君は、気のない相槌を打つ。
操に言われた『じっくり説明』。
想像するだけで、気が重い。


今は霧生君に気付かなかった彼女も、仕事始めを迎えれば遅かれ早かれ彼と繋がる。
同じ職場の脳外科医が、『彼氏』どころか『旦那』だなんて。
いや、実際はそんな簡単に話は終わらず、複雑怪奇に入り組んでいる。
それを……。


「一体、どう説明しろと……」

「説明?」


頭を抱えたい気分で独り言ちると、霧生君に言葉尻を拾われた。
私の頭を悩ませる元凶なのに、なにもわかっていない。
私は黙ってかぶりを振って、肩を落とした。


――まあ。
操と一緒に初詣に行って、話がしたいと思っていた。
少なからず、霧生君に関係する話になったはずだし、仕事始めは開き直るしかない。


覚悟を決めたら、少し気分が上向いた。
オンコール明け毎年味わう、達成感からのふわふわした高揚感と同じだ。


「……行こうか、初詣」


私はグッと顔を上げて、彼を仰いだ。
初詣に行く気になっていたところだし、連れが操から霧生君に代わった、それだけの違い。
そう思うことにする。
霧生君は、まだ不思議そうな顔をしていたけれど。


「うん」


嬉しそうに、にっこり笑った。
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