孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
教授と一色先生を先頭に、脳外科医と研修医がぞろぞろと7B病棟の各病室を練り歩く教授回診。
再びナースステーションに戻ってきた時、優に一時間が経過していた。
回診前、何人かの看護師が看護記録を書いていた大きなテーブルに、紺色のスクラブ姿の看護師がいる。


「あ。霧生先生!」


彼女は僕に気付くと、椅子から立ち上がった。
手術部の鹿野さんだ。


「明後日のオペの術前訪問、よろしくお願いします」


僕の前まで歩いてきて、キビキビと頭を下げる。


「ああ、はい」


僕は、彼女が背を起こすのを待って――。


「……僕がわかるの?」


首を捻りながら訊ねた。
鹿野さんとはつい二日前の朝、救急センターの待合ロビーで顔を合わせたが、あの時彼女は僕が誰だかわかっていなかったようだ。
橋詰さんに『初めまして』と挨拶され、『あのもっさり君』と言われた後だし、何故今はわかるのか不可解だった。
鹿野さんは、一瞬きょとんとした顔をしてから合点した様子で、「ああ」と相槌を打った。


「私、霞とは同期で親友なので。先生と霞の件は、なんとな~く聞きました」
< 132 / 211 >

この作品をシェア

pagetop