孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
言葉通り、心得顔で胸を張るのを見て、


「……茅萱さんって、僕のこと同期に話したりするんだ」

「え?」

「あ、いえ」


胸がほっこりしたせいで、無意識に独り言ちたのを拾われてしまい、口元に手を遣って誤魔化す。


「霧生、先に医局に戻るぞ」

「はい。お疲れ様です」


ナースステーションから出ていきながら声をかけてくれた一色先生に、顔を上げて応じた。
脳外科医局の医師がエレベーターホールに向かう背を見送って、僕はなんとなく吐息を零した。


「じゃ……行きましょうか」


そう促すと、鹿野さんはタブレットやバーコードセンサーをのせたワゴンを押して、僕の後からついてきた。


「すみません。術前検査結果、確認できてなくて。病室で見せてください」

「はい」


病棟の広い廊下に、ワゴンの音がガラガラと響く。


「……先生、聞いてもいいですか」


斜め後ろから探るように問われて、僕は肩越しに視線だけ返した。


「その変身っぷりは、やっぱり霞のためですか?」

「……聞いてるんでしょ。他になにがある?」


それだけ言って、前に向き直る。


「霧生先生、霞が元カレにこてんぱんに振られた場に、居合わせたって」

「…………」
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