孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
『寝首を掻かれないように』
鹿野さんの忠告に含まれた不穏なニュアンスが、頭の片隅にでも残っていたら、されるがまま翻弄されるなんて最悪の事態は回避できただろうに。
しかし、冷静に後悔する余裕は、すぐに失った。
「っ、はっ……」
僕の二の腕を押さえつける彼女の細い腕にかけた手から、力が抜けていく。
腕がだらんと落ちた時、僕の吐息を感じたのか、霞がゆっくり唇を離した。
肩にかかる長さの彼女の髪が、まだ僕の頬をくすぐるほどの至近距離で、真正面からバチッと目が合う。
僕は無自覚のままごくりと唾を飲み、先に視線を外した。
「……なんだよ、急に」
「いっ……いけない? いけなくないよね、わ、私たち夫婦のままなんだから」
――声が、裏返った。
彼女の突拍子のない行動も、なにか思惑あってのことと察せて、僕は少し落ち着きを取り戻せた。
呼吸を乱したまま、黙って彼女に視線を戻す。
霞は目の下をうっすら桜色に染めて、肩で息をしながら僕を見下ろしている。
彼女から確かな情欲を感じて、いやがおうでも背筋がゾクッと戦慄いた。
「……僕と、シたいの?」
平静を装って訊ねると、彼女がこくりと喉を鳴らす。
「きっ、霧生君は、私とシたくないの」
ムキになって、上擦った声で言い返してくる。
鹿野さんの忠告に含まれた不穏なニュアンスが、頭の片隅にでも残っていたら、されるがまま翻弄されるなんて最悪の事態は回避できただろうに。
しかし、冷静に後悔する余裕は、すぐに失った。
「っ、はっ……」
僕の二の腕を押さえつける彼女の細い腕にかけた手から、力が抜けていく。
腕がだらんと落ちた時、僕の吐息を感じたのか、霞がゆっくり唇を離した。
肩にかかる長さの彼女の髪が、まだ僕の頬をくすぐるほどの至近距離で、真正面からバチッと目が合う。
僕は無自覚のままごくりと唾を飲み、先に視線を外した。
「……なんだよ、急に」
「いっ……いけない? いけなくないよね、わ、私たち夫婦のままなんだから」
――声が、裏返った。
彼女の突拍子のない行動も、なにか思惑あってのことと察せて、僕は少し落ち着きを取り戻せた。
呼吸を乱したまま、黙って彼女に視線を戻す。
霞は目の下をうっすら桜色に染めて、肩で息をしながら僕を見下ろしている。
彼女から確かな情欲を感じて、いやがおうでも背筋がゾクッと戦慄いた。
「……僕と、シたいの?」
平静を装って訊ねると、彼女がこくりと喉を鳴らす。
「きっ、霧生君は、私とシたくないの」
ムキになって、上擦った声で言い返してくる。