孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
私はギクッと身を震わせて、判断を迫られた霧生君をジッと見守る。
霧生君は、ふっと厳しい表情を浮かべ――。


「剣崎先生、酒巻さんを覚醒させたままにしてください」


まさに麻酔を増量しようとしていた剣崎先生が、「えっ!?」とひっくり返った声をあげた。


「神経ブロックで局所麻酔を継続。鹿野さん、STを呼び戻してください」


霧生君は先生の反応に構わず、続けて操にも指示する。


「は、はいっ……」


操は弾かれたようにポケットから医療用PHSを取り出した。
私から少し離れて、電話をかけ始める。


「霧生……せん」

「挑むか」


戸惑って呼びかけた私を、一色先生が不敵に目を細めて遮った。
霧生君が、「はい」と大きく頷く。


「言葉って、大切ですから」


落ち着き払って言って、私にまっすぐ視線を向ける。


「え、っと……?」


私は、ドキッと跳ねる胸に手を当て、ギュッと握りしめた。


「よし、やろう」


一色先生が、凛と声を張った。


「おいおい、脳外科さん。無茶ぶりかよ……」


苦い顔でボヤく剣崎先生を横目に……。


「覚醒継続して、腫瘍摘出を開始します。執刀は霧生が続行、俺が助手に就く」

「っ……!」


高らかに宣言する一色先生に、私は大きく目を瞠った。
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