孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
手の平にのせ、私の方に向けて開いてくれる。
中央に、お揃いのデザインの大小二つのリングが収められていた。


「結婚指輪……?」


薄曇りの空の下、光を浴びなくてもキラッと輝くプラチナのリング。
颯汰が、「そう」と答えてくれながら、小さい方を摘まみ上げた。


「仕事中も邪魔にならないように、シンプルなの選んだから。はい。今から嵌めて」

「えっ!? 今から?」

「うん」


柔らかい口調とは裏腹に、わりと強引に私の左手を掴む。
指輪を摘まんだ手で、器用に薬指を浮かせて、リングを滑らせた。
関節に引っかかることなく、すんなりと収まる様を、私はドキドキして見守りながら――。


「……用意してたなんて、知らなかった」


照れ隠しにポツリと言って、左手を目の高さに持ち上げた。
聞き拾った颯汰が、ひょいと肩を上げる。


「僕のこと好きだって言ってくれたから、決死のプロポーズを断られることはないだろうと踏んで」

「決死?」


聞き覚えのある響きの言葉を耳に留め、私は上目遣いで彼を探った。
颯汰は、ちょっと居心地悪そうに目を逸らし、


「……スルーされないように。鈍い霞にも伝わるように、ちゃんと言ったつもりだけど?」


やや不貞腐れた表情で、ボソッと呟く。
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