孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
皮肉混じりに蔑まれているとわかっても、私は思わず吹き出してしまった。


「そりゃ、あんなにストレートに言われれば。中学の時とは、雲泥の差」

「それは……僕も非を認めるから、もう忘れて」


颯汰は苦く顔を歪めて、プイとそっぽを向く。


「嫌。忘れない」


私はクスクス笑いながら、彼の手の平のケースから、大きい方のリングを取り出した。


「私しか知らない、颯汰の成長の証だもん。もったいなくて、忘れたりしない」

「なに。その上から目線」


不服そうに唇を尖らせる彼に構わず、その左手を取った。
彼がしてくれたように、薬指にリングを通す。
颯汰は無言で、左手を空に翳した。
ほんの少し、目を眩ませると。


「これで君は名実共に僕のものか。感慨深いな」


真面目な顔して、しみじみと口にする。
その仕草だと、『颯汰が私のもの』と言った方がしっくりきそうなものだけど。
彼の目尻が満足そうに和らぐのを見たら、間違いを正してツッコむ気にもなれない。
私は、意味もなくソワソワして、


「よ……よろしくお願いします……」


ちょっと上擦った声で、挨拶をした。
颯汰が顔を上向けたまま、私に横目を流し、


「こっちこそ。……あ、お手柔らかに」


手を下ろしながら、はにかむ。
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