孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
私への初恋を拗らせて女性不振に陥り、ジェンダーレスという時代を逆行するほど、自分の周りから女性を排除してきた颯汰。
それもあって、私と恋が始まっても淡泊かと思いきや、予想に反して人並みに独占欲があるし、最近は言葉も直情的。


恋愛に関してはほんのちょっぴり……先輩なはずの私の方が、彼の言動にドギマギして、翻弄されている自覚がある。
私自身、数少ない恋愛経験の中で、こんなに大事にされる喜びも、自然体で受け止めてもらえる安心感も初めてで……。


「私が、今初恋してるみたい……」


二人でエレベーターに乗り込みながら、心の声を漏らし、


「え?」


颯汰に拾われてしまった。


「! ううん。なんでもない」


あたふたと両手と首を横に振って誤魔化し、肩を動かして息をつく。
颯汰は、挙動不審な私を訝しそうに見遣っていたけれど、手術部のフロアのボタンを押して、ドアを閉めた。


すでに仕事モードに戻っているのか、まっすぐドアの正面を向く横顔は寸分の隙もない涼やかさ。
私も彼に倣って、気を引き締める。


手術部のフロアに到着し、颯汰が私を先に促してくれた。
「ありがとう」とお礼を言って、後から降りる彼を待つ。


「じゃ、僕、こっちだから」


颯汰は、ナースステーションとは逆の、手術室の方向を指さした。
この後、オペがあるのだろう。
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