溺愛ハンティング
「副社長、八木さんの記事を読ませていただきました。とても参考になりました」
「それはよかった。じゃあ、よろしく頼むね」

 高砂さんが背を向けて歩き出し、私がようやく身を起こした時だ。

「確かに、ずいぶん緊張してる」

 八木さんがぽつりと呟いたのだ。

「だけど……原因は俺じゃないよね」
「えっ?」

 思わず彼を見やると、なぜだかすねたように鼻にしわを寄せていた。

「あ、気にしないでください。ひとりごとですから」

 うっかり失礼なことをしてしまったのだろうか? でも、どう反応すればいいかわからない。
 そのまま迷っていると、真由ちゃんが笑顔で近づいてきた。

「お話し中に申しわけありません。鳴瀬さん、私たちこれから試着に行くので、お先に失礼しますね」
「えっ、そうなの?」
「はい。相原さんたちももう少ししたら、試着を始めるそうですよ」

 瞬間、その場にへたり込みそうになった。
 もしかしたらそうかなとは思っていたけれど、まだノープランなのは私だけなのだ。

 多忙な人たちが相手なのだから、本来は真由ちゃんたちのように今日の段階でできるだけ進めておくべきだった。
 何も決まっていなくても、たとえば似合いそうなものを数着用意しておくとか、いくらでも方法はあったはずなのに……できなかった。

 いろいろ考え過ぎて、私に余裕がなかったせいだ。
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