溺愛ハンティング
「たいへん失礼とは思いますが、これはプレゼントさせていただけませんか?」
「プレゼントって、どうして?」

 彼がいぶかしがるのも無理はない。
 私が選んだのはイタリア製で、社割を使ってもけっこう値が張るものなのだ。

 それでも引きたくなかった。
 八木さんはとても優しい人だ。さっきの熱いエールも、今みたいなさりげない思いやりも本当にうれしくて、どうしてもそれに応えたいと思った。

 幸い近くにお客様の姿はなかったので、私はさらに言葉を重ねた。

「お礼をしたいんです。八木さんは私のために……シャツ選びをさせてくださったんですよね」
「いや、まあ。それは」
「お願いですから受け取ってください、その……コンテストのバディとして」
「なるほど。バディねえ」

 その言い方が気に入ったのか、八木さんは声を上げて笑った。

「わかりました。では、これはありがたくいただきます。だけど――」
「だけど?」
「次のお休みの日につき合ってくれませんか? 俺にも鳴瀬さんにお返しさせてほしいので……バディとして」
「でも、どこに?」
「山に」

 あまりに思いがけない申し出だった。
 私はあっけに取られて、返事もできずに立ち竦んでいた。
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