溺愛ハンティング
 ここの景色を楽しむためだろうか。丸太のベンチがあったので、私は八木さんに声をかけた。

「あの、ひと休みしませんか? 私、ココアを持ってきたので」
「ほんとですか? うれしいな。じゃあ座りましょ」

 促されるままベンチに腰を下ろすと、彼も隣に座った。

 バッグパックから水筒を出して、スタッキングカップに熱いココアを注ぐ。
 その甘さにほっとしながら並んで座っていると、ひとりで思い悩むのがばかみたいに思えてきた。

「八木さん、さっきのことですけど……」
「鳴瀬さんに告白したことですか?」
「そ、そうですけど……ライバルって、どういうことですか?」

 すると八木さんはココアをひと口飲んでから、私を見た。

「だって副社長さんのこと、好きでしょ?」

 その瞬間、心臓が止まるかと思った。

「ど、ど、ど――」
「あの人を見る鳴瀬さん、あこがれてるんだなって丸わかりでしたよ。実は俺も、よくああいう目つきで見られますから」

 自慢のように聞こえそうなのに、淡々とした口調だからか説得力があって納得できてしまう。
 それに八木さんはあくまで事実を語っているのだろう。

「だけど二人がつき合っている感じはなかった」
「あ、あたり前じゃないですか! 副社長ですよ! 既婚者だし、雲の上の人です!」
「だからがんばろうって決めたんです。カップルじゃないなら、俺にもチャンスがあるでしょ?」
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