溺愛ハンティング
 うろたえきっている私と違って、八木さんは落ち着き払っている。
 これ……本当に現実なんだろうか?

「ツアーの日、鳴瀬さんが俺に向けてくれた視線は特別でした。もちろんコンテストのためだったって、今ならわかりますよ。だけどすごく一途で……うわべだけじゃなく、俺の何もかもを見てくれたような気がした」
「何もかも?」
「鳴瀬さんだけですよ、俺をそんなふうに見てくれたのは。だから君だけはどんなことをしてもつかまえたい。いや、つかまえてみせる!」

 私は目を見開いたまま固まっていた。
 静かな、けれどもきっぱりした決意表明にただ圧倒されていたのだ。

 ふいに八木さんが持っていたカップを置いて、私の両肩をつかんだ。

「息をして、鳴瀬さん。力を抜いて!」
「う……うぅ、ケホ」

 軽く揺さぶられて、咳き込んでしまう。私はすっかりたじろいで、息をするのを忘れていたのだ。

「参ったな。大丈夫ですか?」
「は、はい」

 すると八木さんは頬を染めて、困ったように苦笑した。

「いちいち反応がかわい過ぎです。えっと、理性を失うと困るから本題に戻りますよ」
「かわ――」

 また頬が熱くなった。ふいうちの上に直球だから、私だってかわしようがない。

 それは全部あなたのせいです――と言いたいのを堪えて頷くと、「何か思いつきましたか」と訊ねられた。

「あ」
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