溺愛ハンティング
愛しい君に花束を
「ゆうしょう、おめでとうございます!」

 恥ずかしそうに花束を差し出してくれたのは、ピンクのワンピースが似合う女の子だった。

 五、六歳くらいだろうか。隣にいる若葉が「副社長の娘さんです」と教えてくれたが、そういえば彼によく似ている。
 クリクリした目がとても愛らしくて、いつかこんな娘が欲しいなと思いながら、俺は彼女に笑いかけた。

 その前から別の花束を持っていたため二つになってしまうが、お祝いだから受け取るしかない。

 一月最後の日曜日――。
 
 高砂屋百貨店本店では販促キャンペーンの目玉として、いわゆるビフォーアフターを競うコンテストが行われ、事前に選ばれた三人の男性が参加した。
 ふだんとまったく違う装いを演出するため、それぞれにスタイリストがつき、みんなみごとに変身した……と思う。

 呉服屋の若旦那さんはパンクっぽい黒いレザーの上下。
 料亭の板前さんは太いストライプのジャケットと、揃いのパンツスーツ。
 ライトを浴びて堂々と歩く姿は二人ともかなりイケていた。

 だからこんなことは全然柄じゃない俺もがんばるしかなかった。
 でないと、さんざん悩んでくれた若葉に申しわけない。

 俺が着たのは上着丈が長めのシルバーグレーのスーツで、襟は『マオカラー』と呼ばれる立ち襟だ。

 初めてその服を見た時、俺は正直喜んだ。これなら、あれが絶対映えると思ったからだ。
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