因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
「空木先生が、代わってほしいと」
「空木先生……」
確信には至らなくても、心のどこかで彼女の名が飛び出すのを覚悟していたように思う。
街中で彼女と太助くんが寄り添って歩くのを見かけてからずっと抱えていた胸のざわめきが、いっそう大きくなった。
私は緊張気味にスマホを受け取り、空木先生に呼びかけた。
「お電話代わりました、和華です」
『こんばんは、空木です。先日の香席では大変お世話になりました』
「いえ、こちらこそ……」
当たり障りのない挨拶が途切れ、気まずさが流れたその直後。
空木先生は小さくため息をついてから、軽い調子で言った。
『太助さんにあなたを襲わせる作戦は失敗しちゃったみたいね』
「えっ?」
不穏な台詞に、胸の奥がドクンと鳴る。
私を襲わせる……? なんのためにそんなことを。
『太助さんはもともと醍醐先生に複雑な思いを抱いていたみたいだから、前科のことを先生にバラすわよと脅したら、簡単に手駒になってくれたんんだけど……いざとなったら意外とヘタレね。まぁいいわ。自分で何とかするから』