因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
太助くんが手駒? その乱暴な言いように反感を覚えた。
家元という立場の彼女は、確かにその道では偉いのかもしれないけれど、太助くんは空木先生でなく、光圀さんの弟子だ。
そして光圀さんは、たとえ自分の弟子でも手駒だなんて言わない。
「あの、なにがおっしゃりたいんです? ハッキリ言ってくださ――」
『私ね、今、金沢にいるのよ。醍醐先生と同じパーティーに参加しているの』
苛立ちをこらえて口を開いた私を遮り、空木先生は鈴を鳴らしたような楽しげな声で言った。
空木先生が、金沢に……?
光圀さんが参加しているパーティーの名目は、『日本の伝統文化の発展と継承』だ。
空木先生も香道家だから、驚くことではない。なのに、胸のざわめきが収まらない。
「……なにをするつもりですか?」
『なにって、醍醐先生をベッドに誘うに決まってるじゃない。奥様であるあなたならご存じなのでしょうけれど、醍醐先生だって男よね? 堅そうに見えたって性欲はある。今夜は女としての武器を駆使して、彼を溺れさせるつもりよ。若い奥様もいいけれど、三十を超えた女にしか出せない魅力というものもあるんだから』