因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
と、同時に会場の電気が復旧し、辺りがパッと明るくなった。空木先生は少し不満そうに俺を見上げる。
「あの奥様が、そんなにかわいいですか? どこにでもいるような普通の子じゃないですか。醍醐先生とはまったく釣り合っていません」
どこにでもいるような、普通の子……。他人にとっては、確かにそうかもしれない。
しかし、その〝普通の子〟が自分にとってだけ、特別な存在に変わる。それこそ恋というものではないだろうか。
ふとした表情がかわいらしく、離れた場所にいれば会いたい。本当はもっとそばで触れたいのに、俺よりずっと小さくてやわらかい彼女を壊してしまうのが怖くて、なかなか一線を越えられない。
劣情は膨らむばかりだが、それでも和華のためと思えば耐えられる。
彼女が誰より大切だから。
和華のことが好きだから。
空木先生に返す言葉を考えているうち、俺はいつの間にか自分が和華に恋心を抱いていたことに気づく。
そして、その気持ちはどこか懐かしいものでもあった。
――俺はずっと昔も、彼女に恋をしていたことがある。