因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
誰もいない静かなロビーに出ると、外の様子が見える大きな窓の前で、和華に電話を掛けた。
雪は未だに降り続いており、明日きちんと東京に帰れるのだろうかと、一抹の不安を抱く。
『光圀さん? 今どこですか?』
やがてコール音が途切れ、待ち望んでいた和華の声が聞こえた。
しかし、その声に彼女らしい明るさはなく、かなり切迫した様子だ。空木先生に聞いた通り、不安な夜を過ごしていたのだろう。
「パーティー会場のあるホテルだ。空木先生に話を聞いて、きみに電話しなければと」
『空木先生……今もご一緒なんですか?』
「いや、さっきまで一緒だったが今はひとり――」
『ひどい! 光圀さんのばか! エッチ! 私、信じてたのに……!』
ものすごい剣幕で怒る和華の声に、俺は思わずスマホを耳から離す。
人の話を最後まで聞かず、なにか勘違いしているらしい。
困った妻だと思う反面、和華にならこうして嫉妬や独占欲を向けられるのも意外と悪くないと気づく。
本気で悩んでいる彼女には悪いが、電話の向こうでやきもきしている姿を想像すると、甘い優越感が心を満たすのだ。