因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました

 最後の挨拶を交わしてスマホを耳から離すと、窓ガラスには見たこともないような甘い笑みを浮かべた自分が映っていた。

 もしや、和華と話している時の俺はいつもあんな顔なのだろうか。弟子たちがからかうはずである。

 誰も見ていないのに妙に気恥しくて、ゴホンと咳払いをしてそそくさパーティー会場に戻った。


 翌日、北陸新幹線は案の定大雪による遅延が発生していた。しかし、速度を落として運転してくれているだけでもありがたい。

 大量の金沢土産を荷物棚に載せ、三列シートの窓際の指定席に腰を下ろすと、雪景色に別れを告げる。

 パーティーで疲れていたのか次第にうつらうつらしてきたので、背もたれに深く体を預けて目を閉じた。

 眠る寸前に思い浮かぶのは、やはり和華のこと。

 ――会いたい。たった一日離れていただけでもそう思うのに、俺と彼女には、結婚するまで十年以上の空白があった。

 それは、俺がある重大な過ちを犯したからだ。

 若かりし自分の未熟さと、和華への淡い恋心。

 ぼんやりとその記憶を辿っているうちに、意識は深いところへ飲み込まれていった。

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