因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
「すごいねーみっくん! お父さんよりお店の商品に詳しい!」
「別にすごくはない。まだ勉強しなくてはならないことが山積みだ」
「家元……ってやつなんだっけ? みっくんならすぐになれそう!」
幼い和華の言葉に根拠なんてないのに、当時の俺は少なからず励まされていた。
両親は厳しい人で、俺を叱ることは数多くあれど、褒めることなど一度もなかったからだ。
「俺がもう少しちゃんと香道の所作を身に着けたら、両親に内緒で一番に香席に呼んでやる」
後先考えずにそんなことを口にしたのも、和華への感謝の気持ちからだった。
立派な香道家になれたら、その姿を一番にこの子に見せたい。
「ホント? やったぁ! 約束ね」
和華はにんまり微笑んで、小さな小指を差し出してくる。その意味がわからず首を傾げると、和華が目をぱちくりさせた。
「指切り、知らないの?」
「……知らない」
「ふうん、みっくんちではやらないんだ」
和華はひとり納得すると、無理やり俺の手を掴んで、小指同士を絡ませる。