因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
「ゆーびきーりげんまん嘘ついたら針千本飲ーます! 指切った!」
小指だけで繋がったお互いの手をブンブンと揺らし、最後に小さな小指は離れていく。
よくわからない儀式だが、和華はとても満足そうだ。
「これで、みっくんのお客様第一号は私だね」
「そうだな」
彼女とのたわいない会話は買い物に行くたびに交わされ、俺が香道の知識を披露すると、お返しのように俗世間の流行などを教えてもらった。
俺の家にはテレビもなく、学校へ通う以外は父に稽古をつけてもらうほか、書道や礼儀作法の教室、父の知り合いの茶道家、華道家のイベントに出かけるなど、とにかく子どもらしい娯楽などなにもなかった。
しかし、成長していくにつれ、そういった家庭環境に不満を抱くようになる。
高校生にもなると、時たま稽古をさぼり、放課後に友人たちと街をフラフラと歩くこともあった。
しかし、その途中で一式問屋の前を通りかかると、和華はいつものように眩しい笑顔を俺に向けてくるのだった。